今はなきアメリカのタオルへのオマージュ「リトルサンシャイン」

 

その日、僕はいつになく弾むような足どりで家路に着きました。
何というか、いい映画を見終わった時のような、疎遠になっていた友人から何気ない電話をもらった時のような……とにかく、いい気分で帰ったことを覚えています。

その日、「HOEK」にあるご夫婦が来店してくださいました。
笑顔で挨拶を交わした後、店内の商品をゆっくり見ながら一周し、窓から見える大きな木をじっくり眺め、それから少しの間を置いて、レジにいた僕へ向かってご主人は口を開いたのです。

「実はタオルを作っていまして……」

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その落ち着いた一連の所作に不思議な魅力を感じていた僕の胸には、おそらく既に好奇心が芽生えていたはずです。そんな根拠のない期待を胸に、まずはじっくりとお話を聞かせていただくことにしたのです。

1960年代のアメリカは、綿花の生産とともにタオルの生産もそして品質も世界随一でした。
一人の技術者が仕込みから完成までを任され、タオルの設計、製織、精錬、 染色、縫製の工程のすべてを同じ工場で一貫生産していました。
アメリカには3大メーカーと呼ばれたスティーブンス社、フィールドクレスト社、キャノン社(後にフィールドクレスト社と合併)があり、全盛期のアメリカのタオルは、毎日の洗濯と天日干しや乾燥機の使用にも耐え、使い込むほどにしなやかで、肌触りや拭き心地がどんどんよくなる育成型のタオルでした。

そして1970年代以降になると、日本でも六本木などに、そんなアメリカ製のタオルを紹介するお店ができ、タオルにこだわりを持つ人たちを夢中にさせていたと言います。
そして舞台は1990年代。ここで事件が起きます。
海外からの安価なタオルの輸入攻勢のため、アメリカのタオルメーカーが無謀な価格競争と投機によるマネーゲームの対象となり、突如としてなくなってしまったのです。

140年以上も紡績(原料の繊維から糸の状態にするまでの工程)からの一貫生産を続けてきた産業が、そのような形で終わってしまったという事実。綿花の生産は世界有数でありながら、タオルの生産工場が今はアメリカに存在しないという現実……。その話を聞いた僕は非常に驚きました。そんなことが急に起きたことで、当時アメリカでも日本でもタオル難民が多数出たそうです。

日夏さんもその1人で、とても気に入って愛用していたものが、突然手に入らなくなる喪失感はたまらなかったと言います。
そう、この話を聞かせてくださったご夫妻こそが、以前にもすでに「リトルボッコ」というタオルの回 http://hoekshop.com/littlebodco/でご登場いただいた、「リトル」の日夏さん夫妻です。
その日は、僕と日夏さんとの初めての出会いの日だったのです。

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そして、日夏さんは立ち上がります。
愛用していたアメリカ製のフィールドクレスト社の「ロイヤルベルベット」というタオルへのオマージュとして、そしてそれを超えるタオルを目指して「LITTLE SUNSHINE(リトルサンシャイン)」というタオルを作り出したのです。

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開発に約3年を費やし、試作も幾度となく繰り返したと言います。全盛期のアメリカのタオルの技術を現在に取り入れ、綿花の産地や糸、素材に過剰に頼らずに、加工技術の力で定番となりうる納得のいくタオルを完成させたのです。

その「リトルサンシャイン」のタオルは、よく吸いよく乾き、使い込むほどに拭き心地がよくなるのが特徴です。使い始めは少しかたく感じるのですが、次第にしなやかになる「育てるタオル」と言えます。そう、全盛期のアメリカ製のタオルと同様です。

撚りをかけたコットン100%の糸でパイルを織り、晒し、染め、そして表面のパイルがねじれて紐状になるまで繰り返し長時間洗いこむ、ロングパイルツイスト製法で作られています。このねじれた紐状のパイルが表面積を増やすことで吸水性に優れ、またバネのように伸縮し弾力があるので拭き心地もいいのです。

以前にご紹介した「リトルボッコ」のタオル(記事はこちらhttp://hoekshop.com/littlebodco/)は新感覚でやさしいタオルと言えますが、この「リトルサンシャイン」のタオルは、トラディショナル&ヘビーデューティー、硬派でトラッドなタオルと言えます。また、「リトルボッコ」のタオル同様、東京の青梅にあるタオルメーカー「ホットマン」で製造し、1cm角に切ったタオルを水に浮かべた時に1秒以内に沈む「1秒タオル」という吸水性のよさの証である認証も取得しています。

 

【使用前のタオル】
IMG_0205表面のパイル(ループ)がねじられているのがわかると思います。これにより、吸水性が増し、弾力も出るのです。

 

【使用後のタオル】
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パイルにうねりが出ているのがわかると思います。まるでトイプードルの毛のように、表情豊かです。使用前は寝ていたパイルが、洗って乾かすと息を吹き返して立ち上がり、ふかっとやわらかくなります。

 

実は、日夏さんは10年前にあるタオルブランドを立ち上げ、そのブランドでは今治で製造していました。そのタオルブランドは成功を収め、その功績をホットマンの現社長が見て評価してくれ、自社製品の製造が中心だったホットマンが、製造を請け負ってくれることになったそう。日本でも数少ない、一貫生産をしているホットマンで作れることは、日夏さんにとって念願だったと言います。毎日のように使うタオルは、本来使い慣れたタオルをいつでも買い替えられる定番であることが望まれ、高い品質を保ちながら安定した製造を可能にする一貫生産は必要不可欠だったのです。

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とにかく「リトルボッコ」「リトルサンシャイン」のタオルは、「HOEK」が心からおすすめするアイテムです。どちらも、ハンカチサイズのものがありますので、是非一度試しにお使いいただけると幸いです。色々語っても、タオルは使ってナンボですので。

その日、日夏さんから聞いた話を妻に意気揚々と話したことを覚えています。たぶん妻も何をいきなり熱く語り出したのだと思ったに違いありません。まだ使ってもないのに、いいものに出会えた! そう確信していた僕は熱くなっていたのです。なんせ、今ここに書いた内容は、すべてその日店頭で聞いた話なのですから。その日夏さんの熱さに、僕は完全にやられていました。

「まずは使ってみないとね」と妻は言いました。そりゃそうだ。使わないことには始まらない。ただ、その後、妻がどう感じたかは以前にブログで書かせていただいた「リトルボッコ」のタオルの記事の通り http://hoekshop.com/littlebodco/
あの日、僕が感じたことは間違いなかったのです。僕にとって忘れられない日、いい出会いの日の話。

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この写真は、「HOEK」で初めて開催したタオルのイベント終了後、日夏さんと撮らせていただいたもの。
今では日夏さんとは個人的にも親交を深めさせてもらっています。時に飲みながら聞かせてもらう話が、また面白くってたまらないのです。
こんな素晴らしいものを作り上げた日夏さんご夫婦。それまでの人生も、興味深い逸話ばかり。人生の先輩として、今では色々なことを相談し、勉強させてもらっています。

不思議なことに、縁は縁を呼び、日夏さんを通して繋がった縁は、今では「HOEK」の大きな強みとなっているのです。

LITTLE SUNSHINE(リトルサンシャイン)の商品ページ
http://hoek.jp/?mode=cate&cbid=2036073&csid=47&sort=n

 

 

ウェブマガジン「暮らしとおしゃれの編集室」
コラム “今日のひとしな” 掲載より
http://kurashi-to-oshare.jp

 

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